〒617-0002 京都府向日市寺戸町渋川18-8(東向日町駅から徒歩5分・JR向日町駅から徒歩7分)
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四白(しはく)は顔面部にある経穴で、眼窩下孔部、瞳孔線上に取ります。
足陽明胃経の気が発する場所とされます。
名前の由来は、顔の四方から見て白く明るい場所にある穴でという説と、眼疾患を治して四方が明るく見えるようにする(白=明)働きをもつためという説が確認できる。
使用頻度としては多く、全経穴中でベスト30には入りそうである※1。
『鍼灸甲乙経』には「禁灸穴」と記されています。
• 鍼に関しては、古典には禁鍼ではないが、刺入は四分までとの記載が見られる。
• さらに、後代の書籍には、三叉神経痛に四白穴を使用することに関して、「三叉神経痛は触刺激での発作の誘発があり、疼痛部位への治療が困難な場合もある。また、患部を触れられることは患者自身の不安感を伴う。」といった注意事項が見られた。
承泣の主治症には、以下のような眼や顔面の症状があります。
• 目が痛みや充血
• 顔面神経麻痺(顔・口が片方に歪む・涙が出る・目の充血・めまい)
• 視力がはっきりしない
• 頭痛
• 白内障や角膜混濁
• 眼瞼痙攣
• 眼の痒み
• 麦粒腫・マイボーム腺炎(下眼瞼)
• 顔面浮腫
• 副鼻腔炎
吉田流では経穴名を「高骨」とし、「虫歯・こむら返り・喉の痺れ・吐き気を治す。刺鍼の深さは五分(約1.5センチ)。」※2とあります。
ST1(承泣)同様、三叉神経痛への記載は古典にはほとんど見当たあらず、使用するに際しての注意事項が散見された。
• 仮性近視には睛明、四白との併用が効果的。承泣は上から下に向けて刺入※3。
• 夕方のかすみ目には、四白・太陽穴・睛明と併用※3。
• 顔面神経麻痺の診断では、承泣が垂れ下がる場合「胃経の絡脉に外邪が侵入したため」と判断し、衝陽や隠白を併用する方法が紹介されている※3。
• 蓄膿の際、左右の四白を比べると、悪い鼻の方は圧痛があり少しふくれている。この高低差を無くすように治療する※4。配穴は鼻通穴(鼻部)・印堂・四白・肩外兪・身柱・風門・肺兪・脾兪・胆兪等※5。
• 上歯の痛みに、上歯を支配している知覚神経である三叉神経第二枝を狙う意味合いで、四白を使用する。(三叉神経第二枝【上顎神経】は三叉神経節から出て正円孔を通り翼状口蓋窩に入り、上歯槽神経として上歯に、また眼窩下神経として下眼窩裂→眼窩下管→眼窩下孔(四白)を通って顔面中央に分布します。)※5。
• 『針灸臨床医典』※6間中善雄には、三叉神経痛(第二枝)に四白が紹介されている。
• 『針灸治療大全』※7には、口眼喎斜には患側取穴を中心にし,太陽穴・四白・迎香などを取穴し,頬車から地倉・陽白から魚腰穴へ透刺するとある。
• おなじく顔面の浮腫に四白・頬車・合谷・陰陵泉・膀胱兪・三焦兪を挙げている。
ST1(承泣)同様、眼窩内刺鍼の際の併用穴として紹介されています※9。
・イオンパンピングの経別治療では、三合の治療穴として、プラス通電穴(B黒グリップ)に承泣(もしくは四白)が使われている※10。
・同じくイオンパンピング療法で、目の疲れに合谷(Bブラッククリップ)―(Rレッドグリップ)太陽or四白の配穴が紹介されている(この場合、電流は(B+)から(R-)の方向に流れ、陰イオンは逆方向に移動する。)※10。
四白(ST2)は、足陽明胃経に属する顔面の経穴で、眼窩下孔部、瞳孔の真下に位置します。視界を明るくする効能や位置の特徴からその名が付けられました。
眼科や顔面疾患に広く用いられ、目の充血、視力低下、顔面神経麻痺、副鼻腔炎、上歯の痛みなどに効果があります。
学校教科書的にも多く紹介される、三叉神経(第二枝)への作用については、触刺激で症状が悪化する可能性があるため、慎重な使用が求められます。一方、『鍼灸甲乙経』には禁灸穴とされ、鍼も深刺を避けて浅く刺すことが推奨されています。
※1.沈爾安ら『鍼灸内科文献にみられる経穴の使用頻度の分析』中医臨床16(2): p82-85,1995.
※2.岩田源太郎「吉田流諸本における主治病證の比較」『日本鍼灸史学会論文集 第3輯』:p73-80,2013.
※3。池田太喜男『池田太喜男師の世界』
※4.吉澤勇「蓄膿症の治療」『鍼灸治療室第3集』:p175-179,1996.
※5.池田太喜男「蓄膿症」『鍼灸治療室第3集』:p180-183,1996.
※6.近藤久美「歯痛」『鍼灸治療室第3集』:p212-214,1996.
※7.間中善雄『針灸臨床医典』:p111,1970.
※8.張文進・張彦麗・張彦芳・張彦霞・張博『針灸治療大全』:703-704/713-714,2014.
※9.北村智「眼窩内刺鍼法」『鍼灸特殊治療法』:p139-143,2004
※10.入江正『経別・奇経・経筋療法』,1979.
※11.北村智「イオン・パンピング療法」『鍼灸特殊治療法』:p202-204,2004
Ⅰ.『素問』
①.「其華在唇四白.其充在肌.其味甘.其色黄.此至陰之類.通於土気.」
現代語訳
(土気に属する臓腑の)精気は、唇の四隅にその艶として現れ、肌肉に充実した様が反映される。その味は甘、色は黄である。これは至陰(土)の性質に属し、土の気に通じるものである。
※ここでの四白は、経穴名ではなく「口唇の周りの四隅」をさしている。
Ⅱ.『霊枢』
記載なし。
Ⅲ.『鍼灸甲乙経』
①.「四白.在目下一寸.面頄骨(頄音顴)空.足陽明脈気所発.刺入三分.灸七壮.【気府論註云】.刺入四分.不可灸.」
現代語訳
四白穴は、眼窩の下方一寸の位置で、頬(顴)骨の眼窩下孔部にある。ここは足陽明胃経の気が発する場所である。鍼は三分刺入し、灸は七壮行う。ただし、『気府論』の注釈には「四分まで刺してよいが、灸はしてはいけない」とある。
※『素問』気府論(59)の王冰註については下記参照。
②.「目痛口僻.涙出.目不明.四白主之.」
現代語訳
目が痛む・顔(口)が片方に歪む・涙が出る・視力がはっきりしないといった症状は、四白穴の主治である。
Ⅳ.『千金要方』
①.「四白.在目下一寸.」
Ⅴ.『千金翼方』
①.『千金要方』に同じ
Ⅵ.『外臺祕要方』
①.「四白.在目下一寸.足陽明脈気所発.灸七壮.○主.目痛口僻.涙出.目不明.」
Ⅶ.『黃帝內經素問補注釋文』
①.「『面鼽骨空各一』.四白穴也.在目下同身寸之一寸.足陽明脈気所発.刺可入同身寸之四分.不可灸.【新校正云】按甲乙経.刺入三分.灸七壮.」
※『素問』気府論の『面鼽骨空各一』(顔の頬骨のくぼみに、それぞれ左右一穴ずつある。)の条文への王冰の註解の部分。新校正では甲乙経の条文が出ている(上記参照)。
Ⅷ.『医心方』
①.「四白.二穴.在目下一寸.刺入四分.○主.目痛.口噼.涙出.目不明.」
Ⅸ.『太平聖恵方』
①.「四白二穴.在目下一寸.是穴.足陽明脈気所発.主頭痛目眩.針入三分.先補後瀉.主目眴不止.灸七壮.針入三分.」
現代語訳
四白穴は左右に二穴ある。眼窩の下方一寸の位置にあり、足陽明胃経の脈気が発する部位である。頭痛や眩暈を治すには、三分刺入し、まず補法を行い、その後に瀉法を行う。目がグルグルする状態が止まらない場合には、灸七壮、刺入三分がよい。
Ⅹ.『銅人腧穴鍼灸図経』
①.「四白.二穴.在目下一寸.直目瞳子.足陽明脈気所発.○治.頭痛目眩.眼生白翳.微風目瞤動不息.可灸七壮.鍼入三分.凡用鍼.穏審方得下鍼也.若鍼深.即令人目烏色.」
現代語訳
四白穴は左右二穴あり、眼窩の下方一寸、瞳孔の真下に位置する。足陽明胃経の脈気が発する部位である。頭痛・めまいを治し、眼に白い翳を生じたもの(白内障や角膜混濁)、微風によって目がぴくぴく動き止まらないものを治す。灸は七壮行い、鍼は三分刺入する。鍼を行うときは、穏やかに慎重にして、適切に鍼を下さなければならない。もし深く刺しすぎると、目が黒色(烏色)になる(=視覚障害・眼球損傷を起こす)ことがある。
※微風…風は中風(脳血管障害による半身不随やパーキンソン症候群などで手足のふるえ)を起こすが、微風とはその風邪が軽いことをあらわす。
Ⅺ.『十四経発揮』
③.「四白.在目下一寸.直瞳子.」
Ⅻ.『鍼灸聚英』
①.「四白.目下一寸.直瞳子.令病患正視取之.素注.針四分.甲乙.銅人.灸七壮.針三分.膚翳.口眼不能言.」
現代語訳
四白穴は、目の下方一寸、瞳孔の真下に位置する。患者に正面をまっすぐ見させて取穴する。『素問』王冰註では刺鍼深度を四分とし、『鍼灸甲乙経』および『銅人腧穴鍼灸図経』では、灸は七壮、刺鍼は三分とする。黒目に白い翳(白濁)ができたもの(白内障や角膜混濁)や、口や目が歪んで言葉を発することができない症状を治す。
②.「其華在唇四白.其充在肌.此至陰之類.通於土気.(従滑氏改正)脾者.土也.孤髒以潅四旁.」
現代語訳(太字部分)
(滑寿の校訂本によると)脾は五行の「土」に属する。それぞれの臓は単独(孤)に存在しながらも、その精気を全身(四方)に潅ぎ注いでいる。
※この太字の前の部分は上記の『素問』の文章で、ツボではなく唇の四隅という意味である。その『素問』の文章についての滑寿(1304-1386)の解説である。
④.「四白一寸不可深.」
現代語訳
四白穴は目の下方一寸、深く刺すべからず。
XIII.『鍼灸大成』
③.「四白.目下一寸.直瞳子.令病人正視取之.【素注】針四分.【甲乙】【銅人】針三分.灸七壯.凡用針穩當.方可下針.刺太深.令人目烏色.主頭痛.目眩.目赤痛.僻淚不明.目癢目膚翳.口眼喎噼不能言.」
現代語訳(太字部分)
鍼を用いるときは、まず落ち着いて確実に行い、それから鍼を下すべきである。深く刺しすぎると、目が「烏色(黒色)」になる─つまり失明・重篤な視覚障害を起こす危険がある(目の周りが黒く青たんの様になる?)。主治症は、頭痛、めまい、目の充血や痛み、目が横に涙を流し視力がはっきりしない症状、目のかゆみ、白内障や角膜混濁、顔面神経麻痺による口や目の歪み、発声障害などを治す。
④.「【内経曰】脾者.諌議之官.智周出焉.脾者.倉稟之本.榮之居也.其華在唇四白.其充在肌.至陰之類.通於土氣.孤臟以灌四旁.脾主四肢.為胃行津液.」
現代語訳
脾は、諫め進言する官(君主[心]に対して、よく考え・諫め・判断を助ける役職)のような役割を持ち、そこから思慮・判断の知恵が生まれる。また脾は、体の倉庫・貯蔵の根本であり、栄養(榮)の居るところである。その精華は口唇の周囲(唇四白)にあらわれ、充実の様子は肌肉に現れる。陰の気に属し、土の気に通じる。孤立した臓でありながら全身に津液を灌ぐ。脾は四肢を主り、胃とともに津液の運行を司る。
※上文然り、ツボとは関係はない条文である。
⑤.「【第十四】目生翳膜:睛明 合谷 四白.
問曰:以上穴法.刺之不效.何也.
答曰:此症受病既深.未可一時便愈.須是二・三次針之.方可有效.復刺後穴:太陽 光明 大骨空 小骨空.」
現代語訳
目に翳(角膜混濁や白内障)が生じたときは:睛明・合谷・四白の穴を用いる。
Q:これらの穴に刺しても効果がないのはなぜか?
A:この病はすでに病勢が深く、すぐに一度の鍼で治るものではない。二、三回ほど繰り返し鍼をして、はじめて効果が現れる。
さらに続けて、次の穴を加えて刺すとよい:太陽・光明・大骨空・小骨空。
※大骨空…母指背側面で、末節骨と基節骨の関節間(関節中央)。
小骨空…小指背側面で、中節骨と基節骨の関節間(関節中央)。 ※下記写真参照
⑥.「【第十八】風沿眼紅澀爛:睛明 四白 合谷 臨泣 二間.
問曰:針之不效.何也.
答曰:醉飽行房.血氣凝滯.癢而不散.用手揩摸.賊風乘時竄入.故得此症.刺前不效.復刺後穴:三里 光明.」
現代語訳
風にあたって目が赤く、乾いて痛み、ただれている場合は:晴明・四白・合谷・臨泣・二間を用いる。
Q:これらの穴に鍼をしても効かないのはなぜか?
A:酒に酔ったり、満腹のまま、あるいは房事(性交)のあとなどにより、血と気が滞って体内で熱を帯び、かゆみが生じても散じない。そのとき手でこすったり、こめかみや目のまわりを触ったりすると、そこへ“賊風”(外邪の風)が入り込み、この病が起こるのである。したがって初めの配穴(睛明など)では効果が出にくい。
この場合は、さらに次の穴を加えて刺すとよい:三里・光明。
⑦.「【第二十】眼紅腫痛:睛明 合谷 四白 臨泣.
問曰:此症從何而得.
答曰:皆因腎水受虧.心火上炎.肝不能制.心肝二血不能歸元.血氣上壅.灌注瞳人.赤脈貫睛.故不散.復刺後穴:太谿 腎俞 行間 勞宮.」
現代語訳
目が赤く腫れて痛むときは:晴明・合谷・四白・臨泣を用いる。
Q:この病はどこから起こるのか?
A:これはすべて、腎の水(陰)が損なわれて弱くなり、心の火が上へ炎(たかぶ)り、
肝がその火を制御できなくなることから起こる。そのため心と肝の血が本来の位置(下焦・腎)に帰ることができず、血と気が上に滞って目に注ぎ、その結果、瞳孔のまわりに赤い血脈が走り、炎症がひかないのである。
よって初めの穴に加えて、さらに次の穴を刺すとよい:太谿・腎俞・行間・勞宮。
XIV.『鍼灸穴名解』
「穴在迎面,承泣之下,平明顯見之處,故名四白。」
現代語訳
顔の正面、承泣の下、明らかに見えるところにあるため“四白”という。
ここでも位置的要素(目の下で明るく見える部位)を強調。
XV.『経穴釈義滙解』
「白,明也。……主目疾,使目明四方而光明,故曰四白。」
現代語訳
白とは“明るい”の意である。この穴は眼病を治し、四方が明るく見えるようにするので“四白”という。
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