日和堂はり灸院
(TOP)
時間 料金 場所 保険適用 鍼灸適応症 日和堂の
コンセプト
ブログ
院内案内 治療の流れ 訪問治療 鍼灸Q&A 勉強室 リンク

腫脹全書

下肢の浮腫み(むくみ)を感じてられる患者さんは多くいらっしゃいます。
膝の痛み、腰の痛みをお持ちの冷え性の女性方には特に多いように思われます。

頑固な膝の痛みや、繰り返す腰痛の方の場合に、下肢の浮腫みが取れていくに従って、膝腰などの症状がより治り易くなっていくことがあります。
だいたい、浮腫みに関しましては、一ヶ月程治療をさせていただくとスーっと引いてくる事が多いのですが、たまに最後のもう少しの所がなかなか取れない事があり、それらの状態に対しての処置について何か中医学的な良い本はないかぁと思っていたところ、宝暦9年(1759)に出版された『腫脹全書』『腫脹要訣』が手に入ったので、訓読して、少しまとめてみました。あくまで、個人の勉強用です。

この『腫脹全書』『腫脹要訣』は明の張介賓の『景岳全書』から腫脹の所を抜粋してまとめた書物で、江戸時代にはこういった小部な書に再編して和刻する形の書物が多くベストセラーになっていたようです。(江戸期渡来の中国医書とその和刻版 真柳 誠 ホームページより)

          参考文献    『黄帝内経素問訳注』 『黄帝内経霊枢訳注』 家本 誠一
                    『全訳 漢辞海』 
                    『漢方用語大辞典』 創医会学術部
                    『腫脹要訣』  張介賓



『腫脹全書』 張介賓著 まとめ
経義
論証
腫脹危候
気分諸脹論治
経 義
まず最初に経義として黄帝内経 『素問』『霊枢』より腫脹についての経文を抜粋しています。
『素問』腹中論(40)
帝の曰く 心腹満し 旦(あした)に食するときは則ち暮れに食することあたわずして病むこと有り 此れ何の病と為すか 
岐伯曰く名づけて鼓脹と為す 之を治するに雞矢醴を以ってす 一剤にして知り 二剤にして已ゆ 
帝の曰く其の病復た発すること有るは何ぞや 
曰く此れ飮食節ならず 故に時に病むこと有りや 其の病且(まさ)に已まんとする時と雖も これ故に病気当たりて腹に聚まるなり 

雞矢醴 … 鶏の糞で作った酒
『霊枢』経脈(10)
足の太陰虚するときは即ち鼓脹す 
胃中寒するときは脹満す  
『霊枢』水脹(57)
膚脹とは寒気 皮膚の間に客し(やどり)空空然として堅からず 腹は大きく尽く(ことごとく)腫れて皮厚く その腹を按すに窅(ヨウ){目の窪んでいる状態}として起きず 腹色は変わらず これ其の候なり
帝曰く鼓脹は何如に(いかに) 
岐伯曰く腹脹り身皆大なり大なること膚脹と等し 色蒼黄腹筋起る此れ其の候なり
『霊枢』脹論(35)
脈の寸口に応じるのは 如何にして脹するか 
岐伯曰く 其の脈大堅以って濇なる者は脹すなり 
○帝曰く何を以って藏府の脹を知るのか 曰く陰を藏となし府を陽となす 
○帝曰くそれ気の人をして脹せしむるは 血脈の中に在るかいや藏府の内なのか 曰く三つの者皆存す 然れども脹の舎(本来の発生場所)に非ず それ脹は皆藏府の外に在り 藏府を排し胸脇に郭し{胸郭を押し広げ}皮膚が脹れる 故に命じて脹と曰う 五藏六府は各々畔界あり 其の病各々形状有り 營氣脈を循るが衞氣が逆すると脈脹となる 衞氣脈に並び分に循れば膚脹となる 
心の脹は煩心{胸苦しさ}短氣({息切れ}臥して安からず{ゆっくりと横になれない} 
肺の脹は虚満して{肺気腫}喘欬す 
肝の脹は脇下満して痛みが小腹に引く
脾の脹は良く噦{しゃっくり}す 四肢煩悦{抜けそうに思い} 体重く衣に勝ることあたわず{衣服が重く感じる} 臥して安からず 
腎の脹は腹満し背に引く{伝わる 影響する} 央央然として腰髀{股関節}痛む 
六府の脹 胃の脹は腹満し胃脘痛み鼻焦臭を聞きて{鼻焦げた臭いがにつく}食に妨げあり 大便難し 
大腸の脹は腸鳴りて痛み 而して痛み濯濯たり{下から突き上げる} 冬の日に重なって寒に感じるときは 飡泄して化せず{消化不良} 
小腸の脹は少腹がシン脹〔シンは月偏に眞〕{脹れて膨らむ}し腰に引きて痛む 
膀胱の脹は少腹満して気癃{気質的疾患ではない尿閉}す 
三焦の脹は気が皮膚の中に満ち軽軽然として堅からず 
膽の脹は脇の下痛み脹れ 口中苦く良く太息{ため息}す 
○岐伯曰く衞氣の身に在るや 常に然かも脈に並びて分肉を循る 行に逆順有り 陰陽が和するに随って 乃ち天の和を得 五蔵が更(こもご)も始まり 四時序に循い五穀乃ち化す 然る後厥気が下に在りて營衞留まり止り 寒気が逆上すれば 眞邪相攻め 両気相搏ち 乃ち合して脹となる
『素問』陰陽應象大論(5)
濁気上に在るときはシン脹〔シンは月偏に眞〕を生ず
『素問』生氣通天論(3)
気に因れば腫を為し 四維相代われば{四肢に次々と交代しながら継続して腫れる}陽気乃ち竭く
『素問』五蔵生成篇(10)
腹満ちシン脹〔シンは月偏に眞〕が膈胠{わきの下}脇を支え 下厥し上を冒すは足太陰陽明に在り
『霊枢』本神篇(8)
脾気実するときは腹脹す 
○腎気実するときは脹す
『素問』六元正紀大論(71)
太陰至る所 中満霍亂吐下をなす 
○太陰至る所 身重く胕脹を為す {胕…足の甲}
○土爵の發は民の病心腹脹れ胕脹れ身重し
『素問』至真要大論(74)
諸湿腫満は皆な脾に属す 
○諸脹腹大は皆な熱に属す 
○按ずるに以上の諸脹皆な気の病を為すを言うなり 
『素問』水熱穴論(61)
少陰何を以って腎を主る 腎何を以って水を主る 
岐伯曰く 腎は至陰なり 至陰は盛水なり 肺は太陰なり 少陰は冬脈なり 故に其の本腎に在り 其の末肺にあり皆な積水なり 
帝曰く 腎何を以って能く水を聚めて而して病を生ず 
曰く 腎は胃の關なり 關門利せず故に水を聚めて其の類に従うや 
○故に水病下に腑腫大腹を為し 上喘呼を為す 臥することを得ずは標本共に病む

※ちなみに水熱穴論の水兪五十七処は 岡本一抱子 『黄帝内経素問諺解』には
督 脈 長 強 腰 兪 命 門 懸 枢 脊 中  
膀胱経 白環兪 中膂兪 膀胱兪 小腸兪 大腸兪  
  秩 辺 胞 肓 志 室 肓 門 胃 倉  
腎 経 横 骨 大 赫 気 穴 四 満 中 注  
胃 経 気 衝 気 来 水 道 大 巨 外 陵  
衝 脈 照 海 復 溜 交 信 築 賓 陰 谷 大 鐘
と出ています。
 
『霊枢』水脹篇(57)
水の始めて起こるや目窠{眼窩}の上微かに腫れ 新たに臥して起きる{寝起き}の状の如し 其の頸脈動じ時に欬し陰股の間寒え 足脛腫れ腹乃ち大 其の水已に成るなり 手を以って其の腹を按すに手に随いて而して起こる
嚢裹水{水を包んだ袋}の状の如し 此れ其の候なりや
『霊枢』五癃津液別論(36)
陰陽気道通ぜず 四海閉塞し三焦瀉せず 津液化せず下焦に留まりて膀胱に滲みることが出来ないときは則ち下焦脹す 水溢れれば則ち水脹を為す 
『素問』評熱病論(33)
諸諸水気有るは微腫先ず目下に見(あ)る 水は陰なり 目下も亦陰なり 腹は至陰の居る所 故に水が腹にある者は必ず目下をし腫れしむる 
『霊枢』経脈(10)
胃病むときは則ち腹大にして水腫す
『霊枢』邪気藏府病形篇(4)
胃病む者は腹がシン脹〔シンは月偏に眞〕し 胃脘より心に當て而して痛み 上は両脇膈支え(つかえ)咽通ぜず 食飲下らず 
○三焦病む者は腹に気が満ち小腹尤も堅し 小便を得ざれば窘急し{窮地におちいるさま} 溢れるときは則ち水留まりて即ち脹を為す
○腎脉微大石水と為す 臍已下に起りて小腹に至る 垂垂然として上胃脘に至る 死して治せず
『素問』宣明五気篇(23)
下焦溢れて水を為す
『素問』逆調論(34)
臥すこと得ずして臥すると喘するは是水気の客するなり 水は津液に循って流れるなり 腎は水藏津液を主る 臥と喘を主る
『素問』陰陽別論(7)
陰陽結む(あつむ)者 陰多く陽少なし石水{胃癌や子宮癌、卵巣腫瘍、動静脈血栓など、硬い腫瘤で、腹水を伴うもの}と曰う 少腹脹す
○三陰の結ぼれ之を水と謂う
『素問』湯液醪醴(ろうえい)論(14)
其れ《病》毫毛よりして生ぜず 五蔵の陽已に竭くること有るなり 津液が郭{肋膜腔}に充ち其の魄獨り居り 精を内に単独にし 気が外に耗り 形衣と相保つべからず 此れ四極{手足}急にして 中を動じ是れ気が内に拒みて 形外に施す 之を治すること奈何に ※ 体表から入ってくる感染性の病気ではなく、直接五蔵から発病する内因性の病気(水腫性のもの)について述べている
岐伯曰く 權衡{秤}を平治し 宛{皮膚のしこり}陳{平らに伸ばす}莝{皮膚のギザギザ}を去り 是を以って微かに四極を動かし 衣を温かくし 其の処を繆刺し{左右反対に鍼を刺す} 以って其の形を復し 鬼門{汗腺}を開き浄府{膀胱}を潔すれば 精は時を以って復す 五陽已に布きて 五蔵を踈滌(そじょう){洗い清める}す 故に精自ら生じ形自ら盛んにし 骨肉相保ちて巨気{生命力}乃ち平なり
○按ずるに以上の諸脹皆水の病を為すを言うなり  
太陰陽明論
食飲節ならず 起居時ならずは陰之を受け 陰之を受けるときは五蔵に入る 五蔵に入ればシン〔シンは月偏に眞〕満 閉塞する
異法方宜論
北方は其の民野処を楽しんで 而して乳食す 藏寒えて満病を生ず
○按ずるに以上の二条乃ち飮食の脹を為すを言うなり
論 証
脹の病原が内外の分に有り 蓋し中満するはこれを脹という 而して肌膚の脹するも亦之を脹という 若し腫を以って言うときは則ち単に肌表を言う 此れ其の当に弁す所以なり 但内に脹するは本藏病に由る 而して外に腫れるものも亦藏病に由らざることなし ただ藏気の病各々同じからざること有り 
   
『脹』…中満・肌膚の脹れ 『腫』…肌表面の腫れ

方書に載る所 濕熱寒署血気水食 の弁有るといえども 然れども子(余)之を経旨に察し 之を病情に験しむるに 則ち惟々気水の二字に在りて 以って之を尽くすに足る 

故に凡そ此の證を治するは 気分に在らざれば則ち水分に在り 能く此の二つを弁じて 而して其の虚実を知る 余蘊{ようん}(余分のたくわえ)無く病が気分に在れば 則ち当に気を治すを以って主と為すべし 病が水分に在れば則ち当に水を治すを以って主と為すべし 

然れども水気本は同類を為す 故に水を治めるは当に理気を兼ねるべし 蓋し気が化すれば 水自ずから化す也 気を治めるは亦当に水を兼ねるべし 水行くを以って気亦行く也 

此の中玄妙(奥深く、微妙な、また、優れていること)を以って言い尽くし難し 茲に條列左の(ホームページ上では上)の如しと雖も 然れども運用の法機に因り変通するに在を貴ぶ也
病が気分に在るは気の滞りに因る 気血の逆 食飲の逆 寒熱風濕の逆 気が虚して運化することあたわざるの逆の如し 但治節(調節)行かず者あり 悉く気分に由りて皆よく脹を作る 

凡そ気分の病 其の色は蒼く 其の内堅く 其の脹或は胸脇に連なる 其の病或は藏府に及ぶ 或は倐として(たちまちに)浮腫するは陽性の急速なる也 或は上自り(より)下に及ぶは陽は上に本づくなり 或は通身尽く腫れるは気が至らざること無きや 按すに随って起きる者有り 気嚢を按すが如し也 

然れども此皆気分と雖も 気病にも同じざること有り 
故に気熱して脹する者有り  諸脹腹大皆熱に属すと曰う也 
気寒して脹する者有り 曰く胃中寒する時は則ちシン脹〔シンは月偏に眞〕すと曰く 藏寒満病を生ずなり
気温(濕)にして脹する者あり 曰く諸湿腫満皆脾に属すなり 
気が虚して脹する者あり 元気の虚なり 曰く足の太陰虚するときは則ち鼓脹す 
気が実して脹するもの有り 邪気が実するなり 曰く腎気実するときは則ち脹す 曰く脾気実するときは則ち 腹脹す 曰く胃気実するときは脹す也 

凡そ此皆脹病と雖も 而ども之を治むるの要は 則ち全く其の虚実を察するに在り 
大都そ{おおよそ}陽證は熱多く熱證は実多く 陰證は寒多く寒證は虚多し 
先ず内に滞りて而して後に外に及ぶは多くは実 先ず表が腫れて漸く内に及び 或は外脹すと雖も而ども内脹せざる者多くは虚 小便紅赤 大便秘結するは多くは実 小便清白 大便稀溏するは多くは虚 脈滑有力は多くは実
弦浮・微細は多くは虚 形色紅黄 気息粗長は多くは実 形容憔悴{しょうすい}(痩せ衰え)声音短促するは多くは虚 年青少壮 気道壅滯{ようたい}(ふさがり滞る)するは多くは実 中衰積労神疲れ 気怯き(おじける)は多くは虚 

虚実の治を反することは氷炭の如し 若し誤り用いれば必ず害を致す
病が水分に在るは陰が陽に勝つことを以って肌膚皆腫れる 此気證と本同じではない 

凡そ水の病を為すは 其の色明潤 其の皮光薄 其の腫速からず 毎{つね}に下自り{より}上り肉を按すに泥の如し 腫れに分界あり 蓋し陰下に本づく 浸漬漸く有り 皆水病の證也 

水脹篇(『霊枢』水脹(57))を観るに 寒気の脹を言う 其の腹を按すに 窅(ヨウ){目の窪んでいる状態}として起きず 水脹の病手を以って其の腹を按すに 手に随って起きること 嚢水を裹む{つつむ}の状 此其の候也 然して愚を以って見るに之證験を察するに及びて 則ち此論と相反するが若し 蓋し凡そ是の水證必ず之を按すに窅として起きず 此れ其の水が肉中に在り 糟の如し 泥の如し 按して之を散ずれば 猝に{にわかに}聚まることあたわず 未だ必ず水嚢の比{たぐい}の如きにあるものなし 凡そ按すに随いて起きるは 亦惟虚無の気其の速なることの然である 故に当に弁じること此の若くである也 

凡そ水と気の異を弁じようとすれば 其れ陰陽を弁じようとするに在る耳(のみ)である 若し病が気分に在るは 則ち陽證陰證皆之有り 若し病が水分に在れば 則ち多くは陰證と為す 何ぞや 蓋し水と気と同類為りと雖も 但陽王すれば則ち気が化して 水即ち精と為す 陽衰えれば則ち 気が化せずして精即ち水と為る 故に凡そ水を病むは 本は即ち身中の血気但其の邪と為ったり正と為るのは総じて化と不化とに在る耳(のみ)である 

水が化すことが出来ないのは気の虚に因る 豈に陰中の陽無きに非ずや ※どうして陰中の陽気が無いことに因らないであろうか 此れ水腫の病多く陽虚に属する所以なり 

然して水は腎を主る 気は肺を主る 水は下に漬かって 気は上に竭く(尽きる) 下りて腫満と為り 上がりて喘急を為す所以である 

標本共に病む危うきこと斯れ亟 此れ当に速やかに本源を救うべし 庶くは{こいねがわくは}萬が一を保し 倘{もし}虚喘を以って実邪と作{な}して 猶を然く肺を泄せば敗れざること無し     
上記二段のまとめ
病が気分にあり 病が血分にあり
気の滞りに因る 陰が陽に勝つことを以って肌膚皆腫れる
其の色は蒼く 
其の内堅く 
倐として(たちまちに)浮腫する
或は上自り(より)下に及ぶ
其の脹或は胸脇に連なる
按すに随って起きる者有り 
気嚢を按すが如し也
其の色明潤 
其の皮光薄 
其の腫速からず 
毎に下自り上り肉を
按すに泥の如し 
腫れに分界あり
凡そ是の水證必ず之を按すに
窅として起きず
陽證陰證皆之有り 多くは陰證と為す
気熱而脹者…諸脹腹大皆熱に属す
気寒而脹者…胃中寒する時は則ちシン脹
〔シンは月偏に眞〕す 藏寒満病を生ず
気温(濕)而脹者…諸湿腫満皆脾に属す
気が虚而脹者…足の太陰虚するときは則ち鼓脹す
気が実而脹者…邪気が実するなり
理由

蓋し水と気と同類為りと雖も
但陽王すれば則ち気が化して
水即ち精と為す 陽衰えれば則ち
気が化せずして精即ち水と為る
故に凡そ水を病むは 
本は即ち身中の血気但其の邪と為ったり
正と為るのは総じて化と不化とに在る耳(のみ)である 

水が化すことが出来ないのは気の虚に因る
豈に陰中の陽無きに非ずや 
此れ水腫の病多く陽虚に属する所以なり
陽證は熱多く
熱證は実多し
陰證は寒多く
寒證は虚多し
先ず内に滞りて
後に外に及ぶ
先ず表が腫れて
漸く内に及び 
或は外脹すと雖も
内脹せざる者
小便紅赤 大便秘結 小便清白 大便稀溏
脈滑有力 弦浮・微細
形色紅黄 気息粗長 形容憔悴 声音短促
年青少壮 気道壅滯 中衰積労神疲れ 
気怯き
少年酒を縦にして(ほしいままにして)節無ければ 多く水鼓を成す 

蓋し酒は水穀の液と成す 血も亦水穀の液である 酒が中焦に入れば必ず同類を求む 故に直に血分に走る 経に曰く酒を飲めば衞氣先ず皮膚を走り 先ず絡脈に充ちる 此れの謂れなり
 
然して血は神気なり 血は陰に属して性は和 
酒は淫気なり 酒は陽に属して性は悍(あらあらしい) 

凡そ酒が血分に入れば 血は静を欲するが酒は之を動かす 血は藏さんと欲すが酒は之を逐う(追う) 

故に酒を飲むと身面皆赤し 此れ血に入るの徴(しるし)亦血を散ずるの徴なり 

擾乱{じょうらん}すること一番にして血気耗損無きは未だ之有らず ただ年少壮の時に当たりて ※ 少壮の頃 旋(たちまち)耗し旋(たちまち)生ず因に覚ゆる所無く 血気漸く衰うるに及びて 則ち生じる所が耗する所を償わずして且つ積傷併せて至り病が斯に見える(生じる) 

故に

○或は血が筋を養わざるを致して則ち中風と為したり 
○或は脾を傷ることを致して則ち痰飲瀉痢を為す 
○或は濕熱上に浮かんで則ち喘汗鼻淵(風寒によるものは鼻水、鼻閉、常に鼻がつらい 風熱によるものはさらに鼻流濁涕が止まず)を為す ※ 喘而汗出…裏熱が薫蒸し、熱気が上逆して喘をなし、喘によって汗が出ること  
○或は筋骨に流れて則ち瘈瘲{けいしょう}(手足が伸びたり縮んだりし続ける病証=瘛瘲)疼痛を為す 
○或は血が動き精を傷るを致せば則ち労損吐衄を為す ※ 労損…気が衰え火が旺じ、疲れてものうく、動けば喘して疲れ、表熱自汗、心煩不安などの証をあらわす。 
○或は肌を傷り肉を腐らすに致せば則ち爛(ただれ)瘡痔漏と為す  

其の積漸(次第に)日久しきこと有りて水鼓を成す 則ち尤も多し 

蓋し酒の性本は濕 壮者は気が行って則ち已ゆ酒が即ち血となる 
怯者は<濕が>着して病と成る 酒が即ち水と成る 

惟酒が水と為るのみにして 血気既に衰え 亦皆酒に随いて悉く水と為す 凡そ水鼓を治する所以の者は 必ず血気を以って主と為して 陰を養い濕を利すべし 是は誠に善し 然れども知られていない 

少年初め畏れることを知らずして 惟惟酒に躭る{ふける}(耽る) 此れ其の浸漬已ゆるに一日に非ず 血気天眞(生まれながらの本性)が敗極り此れに至らしむることを又 豈能く旦夕を以って挽回する者あらんや ※どうして短い時間で挽回するであろうか 

故に諸鼓の中に於いて則ち尤も酒鼓を以って最も危うく治し難きの證と為す 

嘗て{かつて}一杜康の徒有り 余が説を信じないで云う 公此の言を為す 其れは亦過なり 茲{ここ}に某(このような)人なるを見ることがある 酒を以って生と為し 朝より暮れに継ぐ 今年已に若干も未だ其の病を聞いたことがない 豈酒果して人を傷るならんやと ※ どうして酒が果たして人に害をもたらすであろうか 

是れかくのごときの人は惟惟千百の中の一二にして天稟(天賦の性質)の特出するなることを知らずなり 然らざれば 何ぞ善く飲む者此の如く其れ(酒)多くして飮に寿なるは(いのちながし)僅かに其の人を見るや ※ そうでなければ どうしてこのようによく酒を飲む者で命が永らえるものが僅かに其の人だけであろうか 則ちその他の此れに因するは従って何ぞ知らん 
斯の人の稟(天賦の性質)有らずして斯の人の嗜{たしなみ}が有れば吾れ恐らくは其の斯免れざらんや
腫脹危候
大凡そ 水腫が先ず腹に起こり そして 後に四肢に散ずるものは治すべし 
先ず四肢に起き後に腹に帰するものは治し難し
掌腫れて紋なきものは死す
大便滑泄水腫消せざるものは死す
唇黒く 唇腫れ 歯焦る(かわく、茶色になる)ものは死す
臍腫れ突出するものは死す
缺盆平なるものは死す
陰嚢及び茎倶に{ともに}腫れるものは死す
脈絶し口張り足腫れるものは死す
足胕(足の甲)が腫れ 膝が斗(ひしゃく)の如きのものは死す
肚上に青筋が見え 瀉後に腹が腫れるものは死す
男性の下半身からの腫れが上るものや 女性の上半身からの腫れが下るものは治し難い
気分諸脹論治
凡そ脹満が気分に由るものは気の虚実を察すべし 若し脹満が中にあって外にないものは 其の病は実のものが多い 経に曰うところの 中満するものは之の内を寫すとは此れを謂っている

若し果ては 酒食厚味に因って気が滞り 脈が滑で大満や大実になるものには 廓清飮を主とするのがよい
脹と痛みを兼ねるもので 諸薬の効かないものには 神香散を主とするべし

若し藏府 脹実して堅くて痛むものには承気湯或は百順丸で之を下すべし 然れども必ず年が壮(若く)で力が強く素(もとより)損傷虚弱等の證無くして そして暴かに脹満が見えるは方{まさ}に峻(はげしい)攻するべし 否{しからずは}則ち只只緩(ゆるやか)治すべし 

如し(もし)果たして気が中に実して 表裏が倶に脹するは蒜(にんにく)瓣(植物の果実や球根で数片に分かれるものの一片。かけら。)を用いて滾(沸きだった)湯を以って煮て微しく(かるく)熟して(煮える)性を留めて 少し塩醋(酢)に蘸{ひた}し常に以って食べる様すすめるべし 大いによく気を破り滯を消す 亦隹法(?)なり

若し気が脹して 小便の出ない場合は四苓散を用いて 半熟蒜を以って膏(軟膏状のもの 半練りのもの)に搗いて(臼でつきくだく)丸くし服すべし 極めて玅(=妙)なり
一 飮食停滞して胃口中焦腹満を致すは 大小和中飮之を酌用すべし
   痛みを兼ねるときは排気飲を主とするべし
一 怒気が中焦に逆し 或は脹れ或は痛むものには 排気飲 解肝煎の類を主とするべし
   喘脹を兼ねるときは四磨飲 或は神香散によろし
※ 喘脹…気喘して腫脹をあらわす病証。本証の虚証は多く脾肺の気虚、陰火の暴逆に属し、実証は多く肺気上逆・湿邪が脾をくるしめるものに属する。
一 大人 小兒 素(もとより)脾虚や泄瀉{せっしゃ}などの證無くして 忽ち爾(このように)として通身浮腫 或は小水が利せざるは 多くは飮食が節を失うこと 或は濕熱を以っての致す所である 廓清飮加減を主とするべしである 或は四苓散 胃苓湯の類皆用いるべし 或は濕の勝るものには平胃散の類を主とするべし
※ 泄瀉…大便が稀薄(泄)、あるいはさらに水様便(瀉)となって、回数が増すこと。
一 脾胃が虚寒し中気が健やかならずして 三焦脹満するは是気虚中満と為す 其の證と為るには必ず多く
呑酸 噯腐 悪食 惡寒 或は常に溏(大便が稀薄なこと)泄を為して 別に火證や火脈無きは必ず藏寒に属す 此れは所謂藏が寒して満病を生じるなり 惟温補すべし
  寒が中焦に有れば 温胃飲 理中湯によろし 
  寒が下焦に有れば 理陰煎 八味地黄湯の類を主とするべし
※ 呑酸…すっぱい水が胃から咽もとにまでもち上がってきて、再び下がること。これは、肝気が胃を犯すことによっておこる。また偏熱と偏寒に分かれ、偏熱は、心煩・咽乾・口苦・舌苔黄色であり、偏寒は胸脘がにぶく痛み、うすい涎末を吐し、舌苔が淡白をあらわす。
 噯腐…胃中の食物の腐った臭気が口から出ること。消化不良のときよくみられる。
一 単腹脹は名づけて鼓脹と為す 外が堅満と雖も 中が空して物は無い 其の象が鼓(つづみ)の如きを以っての故に鼓脹と名づく 又或は 血気結聚して解散せず 其の毒が蠱(花や草につく虫)の如きを又蠱脹と名づく 且つ肢體(手足と胴体 からだ)に恙(やまい)が無く 脹は惟腹に有る故に 又名づけて単腹脹と為す 此れ実は脾胃の病なり 夫れ脾胃は中土の藏と為す 倉廩の官と為す 其の藏が水穀を受けるときは則ち
坤順(『坤』八卦の一つで地を象徴する 性質は順=すなお)の徳がある 其の化血気を生じるときは 則ち乾徤(=健)(『乾』八卦の一つ。純陽性で天を象徴する 性質は健=すこやか)の功有り 果たして脾胃が強健であれば則ち食べるに随って化していく どうして脹することが有るだろうか 此れ惟調摂(養生)が善くなくして 凡そ七情労倦飮食房闈一つでも過ぎ傷ることがあれば 皆よく藏の気を戕賊{しょうぞく}(=戕害 そこなう。殺す)して以って脾土がを受けて 職を失することで正気
                                                        


時間 料金 場所 保険適用 鍼灸適応症 日和堂のコンセプト ブログ
院内案内 治療の流れ 訪問治療 鍼灸Q&A 勉強室 リンク


Copyright (C) 2006-2009 日和堂はり灸院, All rights reserved.